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国立美術館
ほとんどひとけのない美術館の中に入り、らせん階段を上ったところに「コスチューム&テキスタイル」のお部屋があります。小さな部屋に17世紀の衣装が並んでいます。絹地に絹糸で全体に小花刺繍がされているドレスが展示されておりその繊細さ、美しさにため息。紳士用のベストの前身ごろにも、びっしり、本当にびっしり刺繍が施されています。鉛筆で描かれた下絵、それにそって少し刺繍がしてあったり、刺繍が完成してあとは裁って縫うばかりになっている紳士用のベストの生地。
その中に白い三角形のスカーフを幾つか見つけました。麻の生地に、「ホワイトワーク」が施されているのです。スカーフのふちに沿ってアジュール刺繍がされています。驚くくらいに細かい目の生地に細い細い糸で、顔を近づけないと見えないくらいの細かいアジュール刺繍です。この小さいスカーフを作るのに一体どれくらいの時間がかかったのでしょう。気がつくと小さな部屋に10人程の人がいます。メモをとっている人がいたり、熱心に何かを話し合っている人もいます。こんな小さな部屋をお目当てに来る人がいるのです。
部屋の隅には古いレース、ダマスク織りの生地のコレクションが並んでおり、そのそばに机があり、必要であれば電気スタンドが使えます。一つ一つのレースの説明が書かれた本が置かれ、ここで調べ物をする人もいることが伺えます。
長い時間をここで過ごし、「夜警」を探しに出かけました。もう何度目かの「夜警」ですが、ここへ来ると必ず見て帰ります。何度見てもその大きさに圧倒され、飽きることなく、そのたびに小さな発見があります。
今回のお目当ては「デルフトブルー」だったのですが、そこにたどり着いた時はもうすっかり疲れてしまい、今日はもうおしまい。
陶器は次回の楽しみとして、ここへ着たら絶対見て帰らなければいけないもうひとつの楽しみがあります。
国立美術館の建物の下の道路でモンゴルの人たち(だと思う)が馬頭琴を弾きながら歌っているのです。どころが、今日はそばで管楽器の3人が演奏中で彼らはコーヒーを飲みながら休憩中。同じ思いの人がいるらしく足を止め、彼らに何か声をかけている人がいます。それでも彼らは休憩中、手を振って断られてしまいました。その人と、私は立ち去りがたく、振り返りながらその場を離れました。
あの小さな部屋を見る事ができたのですから、アムステルダムまでの遠い道のりも全く気にならない一日でした。 ©2002 Miharu Shinohara |