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カーニバル
お正月が終わるとオランダの南部、ブラバント地方はカーニバルの話で持ちきりになります。
町の商店、デパートはカーニバルの衣装がたくさん並び、生地屋さんにはカーニバル用の生地がたくさん山積みになります。 カーニバルというのはオランダ南部のお祭りで、イースター前に、人々が集まってたくさんのごちそうを食べてから断食に入った事が始まりだそうです。イギリスのパンケーキディと同じことなのでしょう。 この時期、学校は1週間のカーニバルホリディがあります。同じ国の中でも学校のお休みの呼び名がかわり、オランダの北部はこのお休みの事をクロッカスホリディと呼ぶそうです。 小さな子供達は、お休みになる前の日に思い思いの仮装をして学校へ登校します。少し大きい子達は24時間の断食の行事がある学校もあります。息子の学校の先生はピンクの魔女に仮装し授業をしていたとか・・。
イースターの7週間前の日曜日、隣の市では大きなカーニバル、仮装行列があります。私達の住む小さな村はその前日の土曜日に仮装行列をします。 大きなテントを担いだ4人の男の人がやってきました。ヤンハインです。私達を見つけるとその場にテントを置いて、首から下げた『スクローブレア』と言う地酒をポケットから出した紙コップに注いでくれました。この一杯は、冷たいみぞれの中、脚の先まで冷え切った私達の身体を暖めてくれました。周りを見るとほとんどの人がこのお酒を首から吊るし、飲みながら見ています。この時期になると町の酒屋さんにこのお酒を吊るすための袋と紐付きの小さな陶製のコップが売りに出されるのです。 パン屋さんがパンをトレイにのせて見物人に配っています。村中の人がカーニバルを楽しんでいます。 次の日、ヤンハインの奥さんのアティがこっそり言いました。 『昨日私も行列の中にいたのよ』 全く気が付きませんでした。それもそのはず、彼女はお面をかぶってウェイトレスになっていたのだそうです。 『恥ずかしくて今まで出た事がなかったけれど、顔さえ隠せば平気よ。来年も出るわ。あなたも来年は出ましょうよ』 彼女は子供の頃にアムステルダムから引っ越してきました。結婚して24年、ようやくブラバントに馴染んだのでしょうか?
©2002 Miharu Shinohara |