刺繍の杜 オランダ生活記

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大晦日

年末が近づいてくると、街のあちこちで爆竹の音がし始めます。クリスマス休みになった子供たちは大晦日の花火を待ちきれず、数人集まってはパンパンと鳴らしています。
オランダでは大晦日のほんの数時間だけが花火をする事が許されています。ですから普段は花火を買うことも出来ないわけです。もちろん国境があってないのと同じですから、他の国から買って来ても良い訳ですが、年末以外に花火を見かけることは余りありません。12月も半ばになると、花火の広告が目立ち始め、息子ももちろん手に入れてきました。
大晦日は朝から男の子たちが数人集まって、街のあちこちを爆竹を鳴らしながら歩いています。この日はリュックを背負った男の子が数人いたら、ちょっと警戒・・・と思っていたら、20歳過ぎくらいの男の子が一人でリュックを背負い楽しんでいました。
もう一つ、オランダの年末には「オリボーレン」と言うドーナツが欠かせません。このオリボーレンもちろん家で揚げるのが一番おいしいのですが、家で揚げ物をするのを嫌う人も多く、屋台のオリボーレンやさんが大繁盛です。
昔は大晦日にオリボーレンを揚げるのは父親の仕事だったとか。家の庭で揚げるので、外は寒いから男の仕事になったとか、揚げ物をするとそれだけで匂いが鼻について嫌になるから男の仕事になったとか、いろいろな理由があるらしいのですが、とりあえず男の人の仕事であった事は確かなようです。
それぞれ年末の家族での食卓を囲み、そのあと年越しのお祝いをするために友達で、親戚で集まるのだそうです。
息子は自転車で友達の家へ、隣の若いカップルのところには友達がぞくぞくと集まり始めました。
12時の時報とともに、街中の人たちが花火をあげ始めます。音ばかりがやけに大きく、しかもいっせいに火をつけるのですから大音響とともに新年が始まると言う感じです。
オランダのような平らな国ではどこの空を見上げても花火、花火です。小さな花火セットでも2000円近くするのですから、普段はしまり屋のオランダ人もこの花火にはかなりのお金をかけているに違いありません。となりの若者たち花火の大きさ、量には驚いてしまいました。日本ではこんなに大きなものは、絶対に個人でする事は許されないと思うような大きなものばかりです。
この花火とともに「スパークリングワイン」で乾杯です。家の前で、隣近所で、「シャンペン」で乾杯すると言っていますが、もちろん本物ではありません。スペイン産、ドイツ産、南アフリカ産などのスパークリングワインがたくさん売り出されます。
値段も500円くらいから手に入るので、みんな景気良くぽんぽんと開けて乾杯するのです。
年末の郵便局の仕事の一つにポストにふたをする、と言うのがあります。それは郵便ポストの中に花火を投げ込まれたら大変と言う事で、街中のポストが閉められるのです。
この年末花火ではけが人や死者が出ることもあるそうですが、規制する事は考えていないようです。
次の日のテレビのブラバント放送では、やけどの手当てを受けている人、家の中に花火を投げ込まれて怪我をした人、などが映し出されていました。
そうして我が家の前の歩道には大きな焚き火の跡が残されていました。

2002/1/1

©2002 Miharu Shinohara