刺繍の杜 オランダ生活記

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Middelburg(ミッデルブルグ)

オランダの南西、Zeeland(ゼーランド)にミッデルブルグという古い町があります。

この町はゼーランドの州都で東インド会社の拠点のひとつとして栄えた町です。星型のお堀に囲まれた、赤レンガの建物が並ぶとても美しい町です。Zeeというのは海という意味で「海の土地」という名の通り、海と何本もの川に囲まれており、1953年に大洪水に襲われ堤防が決壊し、多くの人が亡くなった事から水の量を調整する堤防が作られたそうです。

私たちはロッテルダムから西に向かい「N57」という道路、つまり堤防の上を走る道路を通ってミッデルブルグに行く事にしました。
3本の堤防を渡って、途中「Neeltje Jans」というデルタ博物館を見ながらミッデルベルグに着きました。
ゴシック建築の市庁舎や修道院などももちろん美しいのですが、何気ない小さな路地がとても静かで、すてきな散歩道になります。

建物の地下に向かって、裏庭に荷物を運び入れる扉がついていたり、昔のままの建物が保存され、今も使われている様子に驚きます。
今日の目的はこの町の郊外にある「チーズファーム」です。以前来た時のパンフレットを持って、観光案内所で教えてもらい日本からやってきたチーズ好きのためにようやく探し当てました。

「Schellach」というこのファーム、ここで作ったさまざまなチーズを売ってくれるのです。夏には作る過程を見学するツァーもあり、チーズ好きにはたまらない場所です。
この農場のご夫婦は去年引退し、今は4人の娘さんのうちの3人が共同で後を引き継いでいるのだそうです。
たくさんのお客様で混雑しているにもかかわらず、チーズ工場を案内して、説明をしてくれました。
毎日1,700リットルの牛乳からチーズが作られるのだそうです。1キロのチーズに100リットル、17個の丸い大きなチーズが毎日出来上がるのだそうです。チーズを形作ってから、3日間塩水につけて塩味をつけます。四角いチーズは角ばかりが塩気が強くなるので、丸いチーズの方が均等に塩味がつく事、毎日、ひっくり返しながら最低1ヶ月置くことなどなど、驚く事ばかりです。
「私には息子が3人いるけど、長男がとても興味を持っているので、彼が絶対あとをついでくれるに違いないの」
3人の娘さんの一人が嬉しそうに教えてくれました。
マスタード入りのチーズやこしょう入りのチーズ、そうして2年もののチーズなどを少しずつ切ってもらいました。
そのあとはもちろんワインを手にチーズ談義に花が咲き、大満足の一日でした。

©2002 Miharu Shinohara