刺繍の杜 オランダ生活記

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アウド ヒュースデ(Oud Heusden)


ブラバントの北を流れるマース川の川岸にOud Heusden という小さな港町があります。昔はこの川を利用してブラバントの首都デンボスに荷物を運ぶ拠点となって栄えた港です。今でも古いレンガ造りの家が多く昔にタイムトリップしたような気がする街です。今は観光地として1年を通じてたくさんの観光客が訪れます。その小さな街で昨年クリスマス前の日曜日にお祭りが開かれました。この街のキャッチフレーズ「16世紀の商業都市Oud Heusden」という通り、貿易で栄えた街なので、年末にその年の繁栄をたたえる為のお祭りでした。

12月17日、10時から15時まで、そして今年のテーマは「中世」です。このテーマは毎年変わります。街の人達はこのテーマにそって色々なものを用意するのです。街の入り口で入場料を払って中に入ると、まずプログラムが配られます。この日1日は街中が「中世」に戻ってしまい、その頃のコスチュームをつけた人達が街のあちこちで寸劇をしたり、楽器演奏をしたり、物を売ったりしています。年末になるとどこでも売りに出す「オリーボーレン」(オランダ風揚げドーナツ)、「アップルフラッペ」などのおやつ、魚の天ぷら、エルテンスープ、豆スープ、そしてもちろんチーズの出店。

各商店もお店の前でクリスマスグッツの販売、暖かいグリューワイン、店内でも中世風に着飾った店主が応対してくれます。突然あたりが騒がしくなり、大勢のナイトが罪人を引きつれて絞首刑台に向かいます。今から処刑が行われるのです。台の上で役人が罪状を読み上げ人々は口々に何かを叫んでいます。本当に首に縄を巻きつけ大きな音と共に死刑が執行されました。実際は衿の後ろを大きなフックで釣っているのですが、死んだふりをした罪人を下ろし、行列は去って行きました。舞台の上だけでなく、街のあちこちで同時進行で色々な事が行われています。古い衣装をつけた子供達が船から荷物を下ろしていたり、道端でたらいと洗濯板で洗濯している婦人達、薪で火を起こしその上でワッフルを焼いている人達、皆街の人達です。その日そこを訪れる観光客に混じって「中世」の衣装に身を包んだお年寄り夫婦が寄りそって歩いています。きっとこのお祭りを楽しみにしているのでしょう。

さて、今年も行ってみたいと思って市役所に電話をしてみました。

「今年の年末のお祭りはいつですか?」

「何の事ですか?わかりません。」

市役所では全くこの問いの答えてくれる人はいませんでした。あちこちの部署に回され、同じ質問を何度もして、ようやく手に入れたのは観光案内所の電話番号。初めからくれたらよいのに。

結局、この「年末祭り」は隔年行われる事、次回は2002年の12月15日だということがわかりました。楽しみにしていたのですこし残念でしたが、来年はきっと行こうと思っています。

 

©2002 Miharu Shinohara