オークション

土曜日の夜、10時過ぎに電話がなりました。

「明日忙しい?」

アムステルダムでオークションがあるというのです。

ナニ・レイは、アンティークが好きであちこちのオークション会場に足を運んでいます。

「今日行ってみたらオランダの古いサンプラーがたくさんでているのよ。こんな事はめったにないことだから、ぜひ明日行ってみたら」

と知らせてくれたのです。

高いのでほとんど買う事は出来ないのだけれど、見るのは大好きなのだそうで、家具、小物、アクセサリー、サンプラーなど、少しずつ集めているのだそうです。

結婚して30年あまり、家の中の家具を少しずつアンティークにそろえています。家を買ってすぐに家具をそろえるのではなく、一つずつ好きなものを集めていくのはオランダ流なのでしょうか。

「アクセサリーは見るだけで楽しくなるでしょう。見るだけよ」

どうせ買えないから・・なんて考えないのでしょう。

オークションは、まず始めに内覧会が数日開かれます。会場に番号が貼られた家具や陶器などがずらりと並んでいる中、一つ一つ自分の目で確かめ手にとってみたり、ひっくり返してみたり、あらゆる角度から眺め、欲しいものに目星をつけるのです。番号と説明、写真の載っているカタログにはおよその値段が書いてあるので、それを目安にするのです。

そうして数日後、オークションが開かれます。実際にその場に行ってほしいものを競り落としても良いし、家からファックスと電話で参加する事も出来るのだそうです。

次の日、オークションの内覧会の最終日という事なので私たちは朝からアムステルダムに向かいました。

入り口を入ると、大きな家具、伊万里、掛け軸、などと一緒にサンプラーがあちこちにかけられています。

サンプラーは1600年代のものから1900年初めまで20点ほどが出展されていました。地の生地の色は黄ばんでいるというより茶色に変色してしまっているものすらあります。安いもので数万円、一番高いものは25万円くらいが予想されるのだそうです。

ニードルポイントが刺された椅子も数セットありました。

新しいものより、古いものにとても惹かれるのはなぜなのか、自分でもわからないのですが、100年以上も前の人たちが刺したパターンが今でも多くの人によって再現されているということは、そのパターンが少しも古く感じられないという事なのでしょうね。

その中で区限刺繍のようなパターンのサンプラーが気に入ってしまったのですが、家に帰って辞書で引いてみると「布切れ」という名前。

そんなかわいそうな名前を付けなくても…と思うのですが、華やかさの無いとても地味な「布切れ」、何とか再現してみたくなりました。

©2002 Miharu Shinohara