お針子日記
2004年8月11日
「日本のどこに・・?」
たくさんの方が待っていてくださるとの、とても嬉しいお便りをいただきました。
ほんの少しの東京暮らし以外はずーっと横浜に住んでいたのですが、今回の帰国は全く初めての土地、静岡県、清水です。
真っ先に頭に浮かんだのは清水の次郎長親分のこと。
でもそれ以外にもお茶や、イチゴ、まぐろ、おいしいものがたくさん、そうしてもちろん富士山・・たくさんの楽しみが待っています。
穏やかな気候とおいしいものに囲まれての楽しい日々がやってくるに違いありません。
オランダのたくさんの思い出を箱に詰めながら、この思い出を取り出す土地のことを思い描いては手が止まります。
目が覚めたら荷物がすべて移動していたら良いのになって思うのですが、でもきっと、この「箱に詰める」という動作がここでの生活に区切りをつける大事なことなのでしょう。
2004年7月31日
少しずつ片付いて行く部屋を眺めながら、オランダでの日々を思います。楽しかったことしか思い出せないのは、どんなことも楽しく思い出すのは、きっとオランダが好きだから・・・なのでしょうね。
こうして引越しをするのは12回目。一度の引越しに前後1ヶ月以上荷物の整理をしているので、12ヶ月以上荷造り、荷解きに費やしているということになります。
最長5年半、最短4ヶ月という動き方です。
それでも思い出せるのは引っ越し当日の慌しさだけ、きっと手抜きで適当にしていたのでしょうね。
荷物を整理しながら、次の家ではどこに置こうか、どこで使おうかと楽しみながら詰めています。
最後に行きたいところは・・?欲しいものは・・?食べたいものは・・?どう考えてもあまり浮かんでこないのです。
切に願うのは、ここで知り合った方々とまたどこかでお会いすることができると良いな、ということ。
きっとできるよね。
2004年7月15日
日本への帰国が決まって落ち着かない日が続いています。
とはいえ、針を持つことはやめられないので、その合間に少しずつ荷物の整理を始めなくちゃ・・。
新しいことを始めるというのは、わくわくして嬉しいのですが、何かをおしまいにするというのはとても寂しい気がします。
この不思議な水路の上のお家もおしまいだし、柳栽培の湿地帯をお散歩するのもおしまい。ガラガラうがいするみたいなオランダ語もおしまい・・・でも考えてみると日本で新しい生活が始めるのだからわくわくもいっぱいかな。
2004年6月27日
昨日はサッカーEURO2004の準々決勝でした。
オランダはスウェーデンとPKの末ベスト4に進出です。
町中がオレンジに燃え、行き交う車はオレンジの旗をたなびかせ、子供たちの頭はオレンジ色に染まっています。
勝利の瞬間はあちこちで歓声が上がり、真夜中というのに庭に飛び出した子供たちの歓声が聞こえてきました。
オレンジ色の嵐の中で、次はオレンジのドイリーを作りたい!
さて来週はオレンジの糸探しに出かけよう!
2004年6月26日
冬の間にためた胡桃の殻で生地と糸を染めました。
濃いグレーのすてきな色。
桜のピンクにのせたらどうだろう・・。なんて考えながら桜の木を眺めていたら桜の青葉で染めて見たいと。
こんなに小さな木、剪定と称して切ってしまったらいけないよね。
2004年6月20日
トイレットペーパーを入れてトイレに置きたいんだけど・・・
こんなリクエストはとってもうれしいのです。
小さな巾着にトイレットペーパーを入れておいたらかわいいかな。
そう思ったらどうしても作りたくなって、ブルーのアリオサをチョキチョキ切りました。ちょっと濃い目のブルーの糸で、型紙もなく刺し始めました。さてどんな風になるのやら・・。
2004年5月27日
最近ハーダンガーから少し離れてアジュール刺繍やオープンワークを刺しています。
いろいろなステッチを試して見るのが面白くて、なかなか作品にはならないのですが、あちこちのすみにいろいろなパタンが出来ていくのが面白くてつい時間を忘れてしまいます。
こうして少しずつたまっていくハギレ・・・そうハギレとしか言いようがないかも。これもすこしずつきれいに並べたらサンプラーになるのかなって思いながら、でもこの小さなお試し布たちも大事な大事なお宝で、眺めているだけでも飽きないのです。
オランダの明るい春の日差しの中でテーブル一杯に広げた布たちが、なんだか輝いているみたい。
2004年5月19日
刺繍三昧のドイツの旅から帰ってきました。
シュバルマ刺繍はずーっとあこがれていた刺繍で、オランダ人やベルギー人の先生に何度か習っていたものの、本場ドイツで習うことが出来るなんて、思ってもいなかった刺繍です。
去年のシュバルマ旅行に引き続いて、2度目の村は私の中ですでに懐かしい村になっていました。
滞在中は針を持つ以外何もしなかったというくらい、お針三昧。
しかも2年に一度の特別展だそうで、去年見た常設展示に加え、驚くほどたくさんのシュヴァルマ刺繍が並んでいてそれを見るだけでも大満足でした。
家に戻って記憶とメモを整理しながら、あっという間に過ぎてしまった5日間の旅を懐かしく思い出しています。
またまた増えてしまった刺繍布と、たくさんの本や図案を前に、ただ幸福感に浸っているのです。
2004年5月10日
ずーっと忙しくて、針をもてない日が続いていて、ちょっぴり疲れ気味。針をもてないというのが一番のストレス。これはもう小さい頃からそうだった様な気がします。
ほんの少しの時間を見つけて、他のすべてを投げ出して針を持ちました。車を運転しながら、街を歩きながら、あの布は、あの糸はこんな風に使おうといつも思うのですが、その思いは忙しさに流されて、思い出すことが出来なくなるのです。
忙しいという字は心を亡ぼすって・・・これは本当にそうかもしれない。投げ出されたものたちはとってもかわいそうだったのですが、たまにはこんなことも良いよね。
先週末、懐かしい高校時代の友達が「オランダ、ベルギーツァー」で遊びに来てくれました。
オランダ観光を取りやめ一日おしゃべり三昧。3人のおしゃべりはホテルでのお別れの瞬間まで止まりません。
「あなたがオランダにいるから、私たちはオランダに来たのよ。あなたがチェコにいたら、私たちの行き先はチェコだったのよ」
心が軽く、温かくなったとたん、とにかく針を持ちたくなってしまったのです。
久しぶりに出来上がったドイリーはなかなかの出来上がり。
さて、これでしばらくは心も軽やかに、人にやさしく出来るかな?
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