お針子日記

2003年4月29日

イラク攻撃が始まってすぐに日本の友達が「ブローチプロジェクト」を始めました。平和を願う気持ちを何かに表したいと、集まったのです。それぞれ時間を調整しながら、手分けをして完成させてくれました。遠くオランダからはただそれを見守るだけ。
何も出来ないで、ただ待っていただけでしたが、とうとう出来上がったブローチは、海を渡ってやって来ました。
着々と出来上がっていく様子を、知らせてくれるメールを読んでいるだけで、私も参加したような気になっていたのでした。
本当は娘の分、母の分・・なんて考えていたのに、どれもこれもかわいくて全部自分のものにしてしまいたくなっています。
でもそれもすこし反省。平和への心をみんなで分かち合うのが良いに違いないのですから。

2003年4月25日
「押し花のケーキ屋さん」でお昼を食べましょうと誘われたときから、楽しみで仕方がなかったのですが、とうとう今日その「押し花のケーキ屋さん」へ行ってきました。
古い教会の向いにあるこのお店、ショウウインドウにはたくさんのケーキが並び、チョコレート、クッキーなどもとてもすてきにディスプレイしてあります。
その奥に真っ白な丸テーブルと、白く塗られた籐の椅子がおかれ、壁には色がきれいなままの押し花がきれいにデザインされた額が並んでいます。食事は簡単にスープとパンにして、あのかわいらしいケーキを食べなくては・・・。
イチゴのショートケーキやチョコレートケーキ、ティラミス、りんごケーキ、どれもおいしそうでなかなか決めることが出来ません。
ようやく決めたのはチョコレートケーキ。チョコレートクリームにラズベリーが混ぜ込んであり、甘さも控えめで大正解。
お店の本当の名前は分からないままですが、「押し花のケーキ屋さん」の名前がぴったりのお店でした。

2003年4月20日

良いお天気に誘われて、旧マース川までサイクリングに行ってきました。サイクリングと言ってもほんの10分くらい走るとそこはもう川沿いの道なので、ちょっとそこまでっていう感じなのですが。
めきめきと音が聞こえるんじゃないかと思うくらい、新芽がぐんぐん伸びて、行きと帰りでは葉っぱの量が違うのではないかしらというくらいです。途中のゴルフ場のなかにサイクリング道路が通っていて、そこはもうおなじみのところなのですが、小さな小川が流れ、いつもたくさんの水鳥がいます。
今日もサギが水辺に立ってじーっと獲物を探しています。あっと思った瞬間に飛び立ったと思ったら向こう岸に降り立ち、そのくちばしには魚が・・・。
すぐ近くまで寄っても逃げる気配もなく、ジーッと立ちすくんでいるので、もしかしたら置物かしらと思ってしまうこともあります。
そういえばオランダではテストに合格しなければゴルフコースに出られないとか、ゴルフコースの中に散歩道や自転車道路があるのですから、ボールがどこに飛んでいくのかわからない人は、やっぱり困るのでしょう。

2003年4月18日
今年もやってきました。鴨のお母さんが雛を連れて登場です。
8羽の雛はピーピーと鳴きながらお母さん鴨の後ろを必死に泳いでいます。ときどき離れていってしまう子もいるけれど、お母さん鴨が何か声をかけて呼び戻しています。
オランダでは「5月はすべての鳥が卵を産む」って言われているようですが、今年の暖かさですこし早く生まれたのでしょうか。
窓から見える小さな島では3週間ほど前から、白鳥が卵を温めています。街のあちこちの池の中にこの小さな島が作られているのですが、そこで白鳥たちが卵を温めているのです。
去年小さかった雛たちは一年たった今、今度は親鳥になってやってくるのでしょうか。

2003年4月11日
すこし前から予感はあったのだけれど・・・送ったはずのメールが届かなかったり、戻ってしまったり。そうしたらやっぱり・・・サーバーがダウンしてしまって、どうにもならない日が続いていました。
メールはもちろん、HPもアップするどころか、開くことも出来なくて、世の中が一変してしまいました。なあんてオーバーだけど、本当にどれだけ毎日のメールを楽しみにしていたかわかりました。
ほんの少しの時間の合間にもパソコンを開いて
「あ〜ぁ、まだだめ!」
なんてしているのですから、おちついて針を持つことも出来まん。
ようやく元に戻りつつあるようなので、心もそれに伴って穏やかになってきました。

2003年4月2日
テレビのニュース番組を見るのがつらくなってきたので、最近はビデオを見ながら、音楽を聞きながら針を持つことが多くなりました。
子供たちが持ってきてくれた曲を聴くことが多く、さまざまなものがいつも流れています。その中で島歌がちょっとお気に入り。聞いていて心が暖かく、ほっとするのです。懐かしいわけではないはずなのに、なぜか懐かしい気がするのです。
今、先の見えない世の中だけど、だからなおさらこんなにやさしい曲が嬉しいのでしょうか。
世界中の誰もが平和を願っているはずなのに、どこかで何かが、ほんのちょっとずれてしまったのかもしれません。

2003年3月28日
GoudaにあるCatharina博物館に行ってきました。
1700年ころからの刺繍展が開かれているのです。古い刺繍は何度見ても飽きることがなく楽しむことが出来ます。オランダはやはりクロスステッチの国、古いサンプラーが並んでいて、どれも少し色があせているけれど、それがまた良い・・・ただ眺めているだけで幸せな気分になれるのです。
去年の皇太子殿下の結婚式の時に使われたゴールド刺繍のことも記事と解説つきで並んでいました。これは名前の通り金糸で刺す刺繍でとても豪華な刺繍です。少し盛り上がったその刺繍はやはりロイヤルファミリーの結婚式には欠かせないものなのでしょうね。
久しぶりのGouda の街は夏の観光シーズンに向けてマルクトの石畳の工事中でしたが、良いお天気に誘われたたくさんの人たちがカフェの前でコーヒーを飲みながらおしゃべりをしていました。
もちろん私もその中の1人だったのは言うまでもありませんが。

2003年3月15日

春がやってきました。晴れ娘が日本からやって来てからと言うもの、オランダには珍しく良いお天気が続いています。
娘の滞在中、娘の友達が入れかわり、ヨーロッパ旅行の途中で寄ってくれるので、我が家はこの1ヶ月の間、お天気だけでなく家の中まで明るく、毎日楽しいおしゃべりがつきませんでした。
そうして昨日、最後の友達が出発して我が家の娘だけになってしまったらなんだか少し物足りない・・・やっぱり大家族っていいなって思いました。
ちょっぴり寂しくなった我が家ですが、久しぶりに出かけたデンハーグですてきな春を見つけました。
寒い寒い冬の間、じーっと土の中で待っていたクロッカスが、一斉に芽を出し、花を咲かせているのです。
私はこの時期のこのクロッカスの咲きようが大好きで、クロッカスを見るためだけに出かけることがあります。
でもこうして思いもかけないところで、クロッカスに出会うととても幸せな気分になれるのです。

2003年3月2日

2月の半ばにお雛様を飾りました。
私が生まれた年に両親が買ってくれた、古いお雛様ですが、私はこのお雛様が大好きです。
お道具やぼんぼりは、小さい頃におままごとのお道具として遊んでいた記憶があるのですが、今はどこにあるのかわからなくなってしまいました。娘たちの大きな段飾りのお雛様よりも、この小さなお内裏様だけのお雛様は小さな桐の箱に収まってしまうので、イギリスに行ったときも、そうしてオランダに来るときにも迷わず引越し荷物に入れてきました。少し色があせているものの、その雰囲気がかえって私のお気に入りで、この時期になると待ちきれなくなって早くから飾ってしまうのです。
桃の花はないけれど、ピンクと黄色のチューリップを飾り、恒例の「バラ寿司」をつくっておひな祭りのお祝いをしようと楽しみにしています。

2003年2月13日
予定していたことがキャンセルになり急に一日することがなくなりました。楽しみにしていたことがなくなるのはとても寂しいのですが、ぽっかり明いた一日もまた、楽しみなのです。
久しぶりに博物館に行ってみようか、そう思いたって出かけました。
刺繍を見たり、織物を見たり、色々な生活を見つけたり、何度同じところへ出かけても、そのたびごとの楽しみがあります。
帰りに覗いた手芸やさんで探していた糸を見つけて、少し手に入れました。そうです、あのパールの糸です。アメリカからも入らないのだそうで、今もまだ待っているのです。
でもこうして、あちこちで見つける事ができるので少しずつ手に入れて、待っていてくださる方にお送りすることが出来ます。
いつまでたっても糸が入荷のお知らせは出来ないのですが、少しずつ、ウェイティングリストは短くなって来ています。

色々なところでめぐり合う糸たちは、もしかしたら私を呼んで待っていてくれるのかもしれません。

2003年2月5日
糸の引き方によって糸の使用量がかなり違うって前から感じていたのですが、色々刺し方を変えてみて思ったのは、特にかがりの部分で差があるようです。
クロスターブロックと呼ばれるサテンステッチの種類はあまりひきすぎてもゆるすぎても、美しくないし使用量もあまり変わりません。
でもかがりのステッチでは、人によって強く引いたり、弱くひいたりとその手加減で多いときは倍くらいの差があります。
私の引き方はちょっと強めだと思います。
初めて刺した記念すべきハーダンガーは、余り強くひいていないので、最近の作品と雰囲気が違って、それはそれでとても懐かしく、気に入っています。。

どちらが良いとは言えないし、もちろんどちらが素敵とも言えません。その時の気分で変わることもあるのですから・・・。

2003年2月4日
最近の郵便事情の悪さに少し参っています。
去年の9月、オランダの郵便局が民営化して以来、なぜか郵便が届くのに時間がかかるようになってしまいました。
お隣のドイツまで1週間かかったことも、日本に20日以上かかったこともあるのです。
日本も郵便局が民営化するそうですが、オランダのようにならないと良いなと思うのです。
以前のオランダの郵便はとても信頼できる、すばらしい郵便局でした。今は過渡期なので混乱を起こしているだけなら良いのですが、このままこれがオランダの郵便事情となってしまったらどうしよう。
でも郵便料金が不足していたら捨てられてしまう国もある、という話を聞いたので、それに比べたらすばらしいじゃない!って思わなくちゃいけないのかしら。

2003年2月1日
少し前からアムステルフェーンに通っています。
アムステルフェーンにはたくさんのハーダンガー仲間がいて、月に一度色々なおしゃべりをしながら、手を動かすのが楽しみです。
1通のメールから始まったこの会、友達の家を借りての「ハーダンガーの会」の開催ですが、友達の友達がまた友達を連れてきてくださる・・と言う風に広がってきました。
他の先生に習われていた方たちと私の刺し方の違いも、その方たちの色使いも、生地のあわせ方も、何もかもが新鮮で楽しくて、1時間ほどの道のりも楽しくて仕方ありません。
お天気の悪い冬の時期なのに、何時も良いお天気に恵まれてのドライブですが、朝ようやく日が昇ってきて少しうす紫色になった空を見ながら、そうして帰り道はまさしく夕ぐれ色の空を眺めながらの楽しい往復です。どこまで走っても平らな国なので大きな空を、心行くまで楽しむことができるのです。
途中、夕ぐれの空の中に風車を見ることができる場所があります。
夕ぐれの空と風車は見るたびに違って見えるのですが、何時も思うのは「今日が一番きれいかも・・」
それはきっと、いつも満ち足りた心で見るからかもしれません。

2003年1月25日

ワインドイリーの輪郭ができたところで全く進まなくなってしまいました。こうなったらもうお手上げで、しばらくほおって置くしか解決策がないのは知っています。
少しくすんだワイン色の生地は絶対にワイン旅行の余韻のあるうちに仕上げたいと思っていたのに、あれからもう5ヶ月。
やっぱりもう一度ワイン飲んだくれのたびに出かけなくては・・。

そう気を取り直して、手に取ったのは今年の初荷の夕ぐれ色。
たくさんの方から「夕ぐれ色を楽しみにしています」ってメールを頂いていたのに、始められないときは本当に全くだめなのです。
ワインの生地とのにらめっこがしばらく続いて、や〜めたって思った時突然に夕ぐれ色を刺したくなりました。
頭の中ではもうすっかり出来上がっています。もしかしたら、この色が気になってワインドイリーが進まなかったのかも。
さっそく生地を切って刺し始めました。一針一針、刺すごとに浮かび上がってくるピンクがかった淡いオレンジ色。
夕ぐれの色って茜色っていうのでしたっけ?
冬の夕ぐれらしく少し寂しげで、うっすらと淡い茜がかった、それでいて日の恵みの暖かさのある色です。

寝る時間が惜しいくらい、一生懸命刺しています。

2003年1月12日

最高気温も-3度くらいまでしかあがらない日が続いています。
家の前の水路はすっかり凍ってしまって、日曜日の今日は皆大喜びで外に出て、スケートをしたり、散歩をしたりしています。
朝早くから、アイスホッケーの練習をしている男の子たち、乳母車を押しながらスケートをしているお父さん、そりを引いたり、犬の散歩も今日は氷の上です。

その中でビールをケースごと外に持ち出して、パーティを始める人たちまで出てきました。
皆スキー場にいるような姿で、おしゃべりをしながらビールを飲んでいます。日本だったら熱燗で・・と言うところでしょうが、ここはビールの国、オランダですからこんなときでもやはりビールなのでしょうが、いつまでも氷の上でビールを飲むことができるオランダ人て、寒くないのかしらと思ってしまいます。

猫までが氷の上を歩いているのですから、オランダの猫もやっぱり寒くないのでしょうか。

2003年1月11日

アムステルダムブルーがアムステルダムブルーじゃなかった・・・ということがわかり、しばらくがっかりしていました。
アメリカの通販で手に入れた、その色見本帳には確かに「アムステルダムブルー」と書いてあって、その色の生地が貼り付けてあるのですが。しかもそれで手に入れた生地はくすんだブルーで、とても気に入った色でした。

ところが、いまになって調べてみると、その見本帳の色見本が他の色と反対に貼り付けられていたのでした。
今になって「アムステルダムブルー」が「アムステルダムブルー」じゃないって言われても・・・。
私の中では、今でもこのブルーは「アムステルダムブルー」なのです。

でも本当のアムステルダムブルーは・・・それはそれでとても素敵な色でしたけれど・・・いったいなんと呼んだらよいのでしょう。

2003年1月4日

夕ぐれ色の糸が届きました。停電の時に選んだ糸です。
ブルーグレーとピンクがかったオレンジの混ざり合ったなんともいえない色の段染め糸です。マリーケと二人で朝もやと冬の夕ぐれ・・・どちらも素敵な色だけど・・と見本を見ながら悩んだ末に、
「私はこちらのほうが好き!」
というマリーケの言葉で決断しました。
どちらも捨てがたい、素敵な色なのです。
年が明けてからあまりお天気が良くなくて、風が強く雨が降ることが多かったのですが、今日は久しぶりに晴れ間が覗きました。
たまに雪がちらつき寒かったのですが、だからこそ空気がきれいで
夕闇のうすくらがりの色は糸の色そのものです。

窓いっぱいに広がる夕ぐれの空を見ながら、やっぱりこの糸にして良かったと1人うなずきながらお宝箱にしまいました。

今年の初荷は夕ぐれの糸・・・嬉しい年の初めです。

©2003 Miharu Shinohara


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