お針子日記


31/12/2001
あと一日で今年もおしまいになります。
あれもこれもと手を出して
結局、仕上がったものが少なかったのは
いつもの年と同じ事。
でもゆっくり刺す時間が出来て
ステッチを楽しんだり、デザインを考えたり
そんな時間がたくさん持てたのは
とても嬉しい事でした。
頭の中で考えるのと実際に刺してみるのと
やっぱりすこし違ってきて
それを確かめながら刺すと言う事が
とってもとっても楽しい事だと知りました。
来年も、と言うより明日もきっと今日と変わりなく
針を持っていることでしょう。

25/12/2001
クリスマスが近づき針を持つ時間が短くなりました。
今年は早めに作ってしまおうと思ったカードも
やっぱりぎりぎりになってしまって
最後はすこし手抜きになってしまいました。
楽しみに待っていてくれる人がいると思うと
どんなに小さなパターンでも
刺さなくちゃという気になります。
9月頃から自分でカラー画用紙をくりぬいて
カードを作り始める人もいます。
いつもぎりぎりになってしまうので
私の手作りカードを受けとることのできるのは
本当にラッキーな数人だけ。
来年こそは…でも少ないから価値があるのですよ。
毎年同じことを感じるクリスマスです。

18/12/2001
ハーダンガーをする時、刺繍枠を使うかどうか…
最近そんな話題が続きました。
私はほとんど枠を使いません。
始めは織り糸を切った後、かがりのステッチの時だけ
丸い刺繍枠を使っていました。
仕事前のほんのひととき、5分くらい時間が出来た時
ぱっと手に持って、すぐに刺す事が出来る
そんな便利さが気に入って、いつからか
枠なしで刺すようになりました。
刺繍し終わった糸がつぶれる事もなく、肩もあまり凝らなくなりました。
肩こりに悩まされていた私にはぴったりです。
オランダに来てネリーの教室をのぞくと
先生をはじめ誰も刺繍枠を使っていません。
すこし不揃いなステッチもご愛嬌、
自分が心地よいのが一番でしょう。

10/12/2001
オーダーしていた糸が届きました。
6色のコースターを作った後
それにあわせたテーブルセンターを作りたくなって
いろいろ考えた末、Caronの段染め糸を
使ってみようという気になりました
色見本をじっくり眺め、考えること数日。
オーダーした後も、やっぱりこちらにすればよかったとか
いいえあのままで良いとか、
優柔不断の自分を情けなく思いながら
届くのを心待ちにしていました。
ようやく届いた糸を手にしても
まだ迷いは消えません。
この段染め糸をどうやって使おうか…。
あまり考えずに思ったように刺す事にしました。
しばらく刺してみて、大満足。
やっぱりこの色にして良かった。
仕上がりが楽しみなテーブルセンターです。

8/12/2001
すこし前からブラックワークに興味津々。
10年以上前にイギリスで手に入れたコピーが出てきたのです。
あらためて眺めてみると、なんだか興味がわいてきます。
ただそれをどうやって刺そうかと思案中
何軒かの手芸店を回って、オランダでは
人気がないということが判明しました。
「それはイギリスのものよ。」と言う答えが
必ず返ってきます。確かに。
きれいな色のクロスステッチがたくさんある中で
黒一色のブラックワークを手にとることは
あまり考えられないかもしれません。
ハーダンガーも伝統的なものは白地に白の糸で
刺されていますが、ここでは段染め糸や
華やかな色で刺す人が多いようです。
全部白で刺すのはホワイトワーク、金糸で刺すのを
ゴールドワークと言うのだそうですから
ブラックワークはやっぱり黒で刺さないと
いけないのでしょうね。

27/11/2001
糸がどんどん増えて整理に困っています。
新しい糸は箱の中、現在進行形のものは
ジップつきの袋に色ごとに分けてあります。
半端になってしまった糸はひとつの袋に
まとめてほおりこんでおくのですが
それがたまってくると何とかしなくてはと気になりだします。
洋服を作る時も、編物をする時も
とにかく生地や糸を残す事が出来ません。
使わないでしまっておくことは
糸や生地がかわいそうな気がしてくるのです。
色番号がついていない物は色見本とあわせ
まとめて何が出来るかなと考えてみました。
ほんの少ししか残っていないものもあるので
6色のコースターにしてみました。
コースターが出来上がるとそれにあわせて
テーブルセンターを作りたくなってしまいました。
足りない糸を買い足さなくては・・・。
こうして整理のはずがまた糸を増やす事になるのです。

25/11/2001
すっかりソフトにはまっています。
手にした瞬間、
私には無理だ!と心の中で叫んでいました。
2?pほどもある厚さの解説書。しかも英語。
これが読めれば苦労はしない…と開き直りつつ
ちょうど試験前休みで家に帰ってきている
息子の後ろ姿にすがりつつ、一人でがんばるふり。
わかっています。彼はオランダの大学生。
「どうして大学受験が終わったのにこんなに勉強させるのさ」
と憤りつつ、予習、レポート、試験に追われてる身です。
がんばる母さんを演じていると、試験勉強の合間に
覗きに来てくれました。
悪戦苦闘の数日間が過ぎ何とかつかえるようになりました。
もう何を作ってもきちんとチャートが出来るはず!
これで安心してハーダンガーに取り組めます。

17/11/2001
刺繍のデザインソフトを手に入れました。
もう5〜6年前から欲しかったものです。
自分でデザインを考えるのが好きでしたが
それをチャートにする事まで手がまわりませんでした。
そうして刺し終わったものは
どんどん手を離れて行ってしまいました。
送別に、手土産に、プレゼントに
手術後の快気祝いに。
きちんとチャートにして残しておけば良かったと
少し残念な気がします。
手書きのチャートを書き始めて
その大変さに閉口しています。
そこで思い出したのがこのソフト。
時間がない、難しそうとあきらめていたけれど、
挑戦してみようと思います。
悔しいのは2000円も高くなっていた事ですが。

15/11/2001
「あ、またやってる!」見つかってしまいました。
サテンステッチが終わって布を切って
織り糸を引き抜いていると必ず言われてしまいます。
「せっかくの新しい布を何だって切り刻んでしまうの?」
引き抜いた糸が山になっています。
「その糸、何かに使えないの?」布を作っている人に
申し訳ないと思わないのかと聞かれます。
洋服を作る時だって、パッチワークをする時だって
新しい布を切り刻んでしまうのは同じなのに
山のような糸を見ると、なぜか
もったいないと思ってしまうのです。
正絹の着物地を織って横糸を全部引き抜いて
織ったあとのついた縦糸をゆらゆらと天井から
さげてディスプレイするデパートがあると聞いた時
糸は一体どうなるのだろうと
心配になった事があります。
「美」のためには仕方ないのよ。
美しく飾るために自分の体に穴をあけて
ピアスをする事だってあるじゃない。
小さな声で反論します。

 7/11/2001
   
かぼちゃ            てんとう虫のチャート

クリスマスツリーの鉢の茶色が欲しくて
一番近くの手芸屋さんに行きました。
思ったようなテラコッタのような色がなくて
結局茶色の糸を買ってしまいました。
どうしても何も買わずに出てくると言う事が出来ません。
日本だったらあそこまで行けば絶対にある!と
知っていたので高い電車賃をかけて
半分以上楽しみで出かけたものです。
オランダには手芸屋さんはたくさんあるけれど
どこのお店もほとんど同じような品そろえです。
たくさんの、本当にたくさんのクロスステッチのキット
刺繍糸、DMCとアンカーそれに刺繍布。
後はそのお店によって、毛糸、人形素材、
パッチワーク用の生地、ペーパークラフト。
それからもちろんシャドウボックス。
アントンピックの絵はオランダの古い街並みだとか。
いつもクロスステッチのキットを横目に
誰も顧みないコーナーで探し物をしています。
今日は気に入った茶色はなかったけれど
入れてくれた紙袋はかわいいてんとう虫のチャートが
印刷されています。アンカーのチャートだそうです。
ここは季節のチャートをお店のカードの裏に
印刷したものをくれるのでそれが楽しみです。
今回はオランダ衣装の女の人とそしてもちろんかぼちゃです。

28/10/2001
10月の最終日曜日、とうとう冬時間になりました。
1時間、時計が戻るので1日が25時間になり
なんとも長い一日でした。
1時間長く針が持てるってことかしら?
夕方は1時間早く暗くなるし、その上寒いのですから
あまり外出をしたくなくなってきます。
それを良い事に、この時期を手芸の季節と呼んで
早く家にこもってしまうのです。
とはいえお天気が良いと、それを口実に
「こんな日は、窓辺に座って外の木々を眺めながら
針を持っているのが一番!」となるのですから
これはもう病気としかいえない状態でしょうか。

24/10/2001
秋風に誘われて自転車で家の近所を探検。
またまた新しい手芸店発見です。
オランダでは本当によく手芸店を見つけます。
小さな小さな村を車で通り過ぎる時、
ほんの5分くらいで通り過ぎてしまうような小さな村でも
必ず教会があって、商店街には小さな手芸店を見かけます。
反面、どんどん閉店していくのも確かです。我が家から一番近い
小さなお店は閉店セールを終えてお店を閉じました。
大きなショッピングセンターの中の大きなお店も閉店しました。
小さなお店は、住宅地や、商店が少し固まっているようなところの片隅に
ひっそりと、開店しています。
ほとんどのお店で、お客が私一人と言う事はまずありません。
途切れることなく、ぱらぱらと皆やってくるのです。
以前、日本の友達にデンマークのチャートが欲しいと頼まれて
探していた時の事、「あなたね。デンマークよりもオランダのほうが
クロスステッチの歴史は古いのよ。きれいな図案がたくさんあるの知らないでしょ」と
いろいろ見せてもらった事があります。
本当に手芸が好きで、オランダが好きなんだなあ。と感じたひとときでした。
この新発見のお店もお散歩コースの一つです。

18/10/2001
完成です。刺し始めはわくわくするけれども
だんだん仕上がってくると落ち着かなくなります。
ステッチを刺し終わってまわりの部分を切り落とす時、
それが一番「どきどき」が最高潮になる時です。
ただの四角い生地がまわりのステッチに合わせて
少しずつ形が変わって、まるでさなぎが蝶になるように
想像がつかないくらいに変化していきます。
失敗だと少しがっかりしながら刺し続けた
アジュール刺繍でしたが、刺し終わった時も
そう思っていましたが、周りを切り落とした瞬間、
思わず「良いじゃない!」と声に出してしまいました。
アジュール刺繍の重たさがハーダンガーのかがりのステッチによって
すっきりと、まるで計算されたように出来上がっています。
こんな番狂わせがあるから、ハーダンガーにのめりこむのでしょう。

9/10/2001
アジュール刺繍を刺し終えました。
サテンステッチで区切った小さい四角の中に
いろいろなステッチを刺してみました。
そう、サンプラーのように。ただあまりにも区画が小さすぎて
アジュール刺繍の良さが出ていません。
うーん。ちょっと失敗かな!!
これを始めた時は小さな四角の中はハーダンガーの
かがりの練習にしようと思っていたような気がします。
真ん中の部分は糸を抜いてハーダンガーを刺そうかしら。
こうやって刺しながら、だんだん始めに想像したものと
違うものが出来上がる事が多いような気がします
きちんと計算された美しさももちろんあるけれど、
気まぐれな美しさ、思ってもいなかったものが
出来上がる楽しさも捨てがたい・・・と思いたい途中経過です。

1/10/2001
お大事箱の中からいろいろなもの出てきました。
ハーダンガーを始めたばかりの時、目の数え方を間違えて
どうしようもなくなってそのままになってしまったものから
途中まで刺したけれど、イメージがわかなくてやめてしまったもの、
たくさんのものがやりかけのまま何年もしまわれています。
そのなかにアジュール刺繍をしてみたくて刺し始めた
真っ白の麻の生地がありました。糸の引っ張り加減が難しくて
生地が波を打ってしまって途中で挫折してしまったのです。
Pulled work というくらいだから引っ張らなくちゃいけないし
でも、引っ張ると生地が波打ってきれいじゃない・・・。
続きを刺して見たくなりお大事箱の一番手前に持ってきました。
刺し始めた頃のことを懐かしみながら刺してみたいと思っています。

20/9/2001
久しぶりにお大事箱の整理をしました。
毎年秋になると、手芸の季節に向かって
すべての生地、糸を眺めて構想を練る(なんとオーバーな)
もしかしたらその時が一番好きなのかもしれない。
刺す順番を決めて、出しやすいようにしまいます。
冬に向かう時はニードルポイントが手前になるし、
夏に向かう時は反対にハーダンガーが近くにあります。
結局、ほとんどは手つかずで並べ替えるのみとなりますが
それでも毎年お大事箱の衣替えは欠かせない行事です。

14/9/2001
アメリカのテロ事件以来、なんだか針が進みません。
毎日テレビに釘付けになっています。
心が穏やかでないと、出来上がりがトゲトゲして
なかなか気に入ったものにならないのです。
色の選び方も、針の進め方も
落ち着かないものになってしまいます。
でも反対に、心がトゲトゲしているときに
もくもくと針を動かしているといつのまに
心がまあるくなってやさしい気持ちが戻ってきたりもします。
ただ今回ばかりは針を持つ気にもならないくらいl
心が沈み込んでしまいました。

11/9/2001
さすが「大きいことは良いこと」のオランダ。
大きなDMCの束を見つけました。
最近見つけた小さな手芸やさんのおばちゃんは
とっても気さくで面白い人です。DMCの大束に驚く私に、
「良いでしょう!このサイズはもう生産中止なのよ。
私はこれが好きだから残ってるの全部持ってきてって頼んだの」
これはもうコレクションするしかない、思わず買ってしまいました。
レジのそばの箱にはハーダンガーの小さなチャートがバサッと
無造作に投げ込まれており「あなたのイニシャルは何?」
私の手には数枚のハーダンガーのイニシャルのチャートがありました。
心が大きいことは良いことだとしみじみ思いました。
DMCの大束を見たい人はどうぞ

8/9/2001
さてさて出来上がりました
小さなベルプルですが、なかなか気に入っています。
小さな金具を探しに行こうと思うのですが、
こういう小物は絶対に日本のほうが、すてきなものが多いのです。
日本で売っているおしゃれな小物、すてきな輸入品って
いったいどこから見つけてくるのかしら。
まあ、「大きいことは良い事だ」のオランダには
決してないだろうと思います。
それとももっと大きな街に行ったらあるのかなあ。

7/9/2001
窓辺に置いてあるリクライニングチェアが、私の指定席です。
刺すものが決まると、小さな籠にまとめてそばに置き
家事の合間やちょっと通りすがりに、ほんの少しの時間でも
座って眺めるだけでも嬉しくなってしまい
なんと安上がりな楽しみだろうと思うけれど
ほかの何かと替えて欲しいといわれても
こればっかりは絶対に手放すことのできない楽しみです。
でも本当はこの椅子、夫のために買ったものなのですが。

6/9/2001
新しいものをはじめる時って
なんだか落ち着かない事ってありませんか
デザインを考えながら、出来上がりを想像する・・・
その時が一番幸せかもしれない。
出来上がりを想像ながら、針を動かす作業を繰り返し
気が付くとほとんど形になっている。
でもそれが思ったとおりでとっても嬉しい時と
なんだかがっかりしてしまう時と、
どちらにしても大切な私の作品には違いありません。
早速デザインを考えながら刺し始めました。

5/9/2001
先日、夫の仕事についてデュッセルドルフに行きました。
ドイツ語のハーダンガーの本がたくさんあるくらいだから
きっとたくさんの手芸用品があるのでは・・・という期待もむなしく
ようやく見つけたのはデパートの中の手芸コーナーだけ。
さすがにZweigartの国、生地はたくさんありました。
Dublin, Cashel linen, Hardanger fabric・・・。
今回の買い物で一番のお気に入りは
両端にグリーンのサテンリボンがとおっているlinen band。
思ったとおりこのサテンリボンはDMCのblue greenと同じ色です。
小さな壁掛けを作ろうと思い立ちました。

3/9/2001
末の息子も巣立ち、我が家には老夫婦が残されました。
時間はたくさんあって、何でもしたい放題!と思っていたけれど
いざ、時間がたくさんあると気が抜けてしまって何もできない・・・
という日が続いています。
自分を励ます意味も含めて、日記でもつけてみようと思い立ちました。
といっても、いつまで続くのか心配ではありますが。


©2001 Miharu Shinohara